2017年7月22日(土)、大阪・十三のJEC日本研修センターにて開催された、「サイト運用の課題とその解決策 ─ 今サイト運用の現場で起きていること ─」セミナーに参加してきました。
講師は住太陽さんで、老舗のSEO情報サイト「検索エンジン最適化」などで情報発信をされているウェブコンサルタントの方です。
当日はむっちゃ暑くて十三たどり着く前に倒れそうでしたが、気合いをいれて参加しました。実際、暑くて体調崩した方のキャンセルが相次いだそうで、運営者のフォルトゥナ・坂本さんが焦ったとおっしゃってましたw
当日にメモをとりながら、自分なりに、こうじゃないかなあと思ったり考えたりしたことを、復習をかねてブログに書いてみました。
フォルトナさまに、セミナーの内容を書いてもいいかお聞きしたところ、ご快諾いただきましたので、けっこう詳しく書いてます!
サイトの運用方針をぶらさない
自分のやりたいサイトは「わかるサイト」と「売れるサイト」のどちらなのか?その方針をぶらさないことが大切です。
わかるサイト(PV増=収入増)
情報を伝えることが目的のサイト。ニュースサイト、情報サイト、キュレーションメディアなど。
アクセス数を多く稼ぐことで成り立つ広告媒体事業になります。
コンテンツを増産し、検索エンジンやソーシャルメディアからトラフィックを集める、広告収入を得るビジネスモデルです。
売れるサイト(CV=収入増)
商品やサービスを販売することが目的のサイト。企業サイトやECサイト。
数少ない見込み客を広告で集めて、説得力のある販売ページで確実にコンバージョンさせ、売上を上げるビジネスモデルです。
購入の見込みがない余計な人まで集める必要はなく、見込み客に絞って集客をします。
SEO情報に惑わされない、SEOの使いどころを間違わない
SEOの使いどころを間違っている企業さんが多いとのこと。SEOが不得意なことも、SEOでなんとかしようとしてしまうとのことです。
SEO手法の間違い
ネット上で目にするSEO情報は、ブロガーさんやキュレーションメディアなど、アクセスを多く集めることでビジネスが成り立っている広告媒体事業=「わかるサイト」のためのものであり、ビジネスモデルが異なる商用サイト=「売れるサイト」には合わない可能性が高いです。
SEOでは計画的な販売ができない
広告とは異なり、SEOからのアクセスや質や量とも計画をたてることが困難です。
そのため、計画的は販売や売上予測をたてることが難しくなります。
事業者がまず狙うべきは「売れるサイト」
人が商品を購入するまでの行動をシンプルすぎる工程にするとこのような流れになります。
工程を追って行くにしたがって、対象者は絞り込まれていきます。
ごく簡単なカスタマージャーニー
解決すべき問題に気付く = マス広告(テレビ等)
↓
解決に必要な知識を集める = SEO(わかるサイト)
↓
解決に役立つ商品を選ぶ = リスティング&LP、モール、専門サイト(売れるサイト)
事業者がまず最初にせめるべきは、もっとも対象者が絞り込まれた「売れるサイト」の領域です。
ここの顧客をとり尽くしたら、その前の段階であり、より多くの対象者がいる「わかるサイト」の領域へ移って、SEOを行うという順番になります。
狙うべきクエリの種類を明確にする
人の検索行動のうち、検索意図とクエリの種類は下記のような比率に分かれるそうです。
1. インフォメーショナルクエリ・・・85%
知識や解決策を知ることを意図。原則SEOで狙う。別名「調べ物キーワード」
2. ナビゲーショナルクエリ・・・10%
特定のサイトやコンテンツへの移動を意図。別名「ブックマークがわりキーワード」
3. トランザクショナルクエリ・・・5%
商品を物色する検索。取引を意図。原則リスティング広告で狙う。別名「売れるキーワード」
ただしこのデータはかなり古いものだそうで、今ではもっと減っているとのことでした。例えば最近だと、何か買いたいときに検索エンジンを使うのではなく、いきなりアマゾンで調べたりしますよね。
このごく少ない数パーセントの「売れるキーワード」を、企業で取り合いをしているというのが現状になります。
インフォメーショナルクエリと、トランザクショナルクエリの検索結果の違い
インフォメーショナルクエリにあたるキーワードは何か、トランザクショナルクエリにあたるのは何かを、「便秘」という話題で比較してみるとこうなります。
インフォメーショナルクエリ
- 便秘 食べ物
- 便秘 ツボ
- 便秘 体操
トランザクショナルクエリ
- 便秘 サプリメント
実際に検索してみると、インフォメーショナルクエリの結果の1ページ目に出てくるサイトは、全て広告媒体サイトでした。要するに、トラフィックを集めるサイトしか出てこないのです。
これがなぜなのかというと、Googleは、インフォメーショナルクエリとトランザクショナルクエリを判別しているため、調べ物をしている人に対しては、広告を出さないからです。
広告を出しても検索者の役にたたないし、広告主である企業に対する印象も悪くし、結果として検索エンジンへの信用がおちるのを懸念して避けているということです。
そのため、リスティング広告で調べ物系のキーワードに入札しても、インプレッションが少ないという結果になります。
ここまでの話をまとめると:
「わかるサイト」を目指すなら、SEOでインフォメーショナルクエリを狙ってPVを伸ばすのが基本。企業が「売れるサイト」を目指すなら、広告でトランザクショナルクエリを抑えてCVを伸ばすのが基本、ということになります。
RankBrainが何を評価しているか
Googleでは2015年あたりからRankBrain(機械学習によるアルゴリズム調整)というAIを利用して、サイトの評価を行なっているそうです。
このRankBrainは、サイトの何を見てどう評価しているのでしょうか?
AIが検索意図に対する満足度を判定
- 検索結果でのCTRが高い(検索者に選ばれている)
- 検索結果に再び戻って来にくい(そのページの内容で満足したことを示す)
- 高評価な口コミがネット上に数多くある(実際にリンクが貼られているかどうかは別、実際の利用者が高く評価している、知名度が高い、信頼度が高い)
- どんなデバイスや環境でも早く確実に動作する(適切なユーザー体験を提供している)
実際にアメリカであった事例で、炎上マーケティングを行なったECサイトが被リンクを大量に集めてアクセスを伸ばしたことがあったそうです。
以降、ネガティブな評価はサイトの評価にも影響するようなアルゴリズムになったそうです。
トランザクショナルクエリの場合、RankBrainが評価するポイント
- 実際にトランザクション(購入や登録、問い合わせなど)に至ったか
- トランザクションが起きる割合(CVR)は競合するサイトと比較して高いか低いか
- 運営者は信頼できるかどうか。運営者や商品やサービスの評判は高いか低いか(運営者ページが充実しているか)
- 販売や問い合わせなどは使いやすいか(レスポンスやレイアウト)・・・あまりに斬新なレイアウトなどは危険かもしれない
サイトの内容はもちろんのこと、ユーザーが実際にそのサイトで申し込みを行なっているか、購入に至ったかといったことから、ネット上でポジティブな口コミがされているかどうか、運営者は信頼できるのかなどを、ビッグデータとしてまるっと判断してサイトの評価につなげているのです。
要するに、リアルでのユーザーの評価が、サイトの評価につながりやすいということです。
いま起きつつあること
検索ボリュームの大きいクエリでは、すでに大きな変化が起こっていて、メジャーなキーワードにおけるECサイトでは、結果に大手のモールばかりが並んでいます。
たとえば、「ダイニングテーブル 通販」などと検索すると、結果には「ニトリ」「ベルメゾン」「楽天」「アマゾン」「無印」など大手の通販サイトで占有されます。
要するに、このような傾向にあるということです。
- 検索ボリュームのあるクエリにおける検索結果は、知名度順や売上順に近づいていっている
- 知名度と売上を上げることがSEOといってもいい時代(広告予算との関係が深い)
- 何よりも優先して取り組まなければならないことは、セグメント内で最大のCVを獲得すること
ビックキーワードを狙うことが困難な中小零細企業にできることのひとつとして、アフィリエイターと組んで商材を販売してもらうという手法を紹介していらっしゃいました。
例えば、下記のようなインフォメーショナルクエリは、アフィリエイターさんの得意とするものですよね。
アフィリエイト向けのキーワード
- おすすめ
- 人気
- 比較
- ランキング
モールや自社サイトで出来ないような集客を、アフィリエイターに依頼することで販売につなげるということです。
競合の製品も含めた人気やランキング、比較コンテンツは自社サイトでは扱いにくいですもんね。
サイト運用とCV最適化の秘訣
事業者がサイトの内容と導線の両方を同時にコントロールし、CV最適化し続けていくのがサイト運用の基本です。
サイト運用とは、ターゲットそのものや、ターゲットとの接点や接触方法、説得方法などを任意のタイミング・任意の内容に変えながらCVを最適化していくこと。
そして、導線の運用とは、見込み客をサイトに連れてくるまでの流れを調整することです。
例えば、運用型広告(リスティング広告、ディスプレイ広告、ソーシャル広告)のように、入札額や広告素材やターゲットなどをいつでも好きなように変更・改善し続ける広告を利用することが、導線の最適化にあたります。
この考え方でいくと、いつでも好きなように調整できないSEOは、サイト運用だとは言えないということでしょうか?
コンバージョン最適化の基本
コンバージョンを最適化するには、以下の3点をまとめて同時に最適化することが基本となります。
ターゲティング(誰を)・・・キーワード、属性、行動
クリエイティブ(どう誘って)・・・広告コピー、バナーなどの広告素材
ランディングページ(どう売るのか)・・・商品ページ、サービス案内ページ←いちばん差をつけやすいところ
ターゲティングやクリエイティブは真似されやすいものですが、ランディングページの落とし所というか、どうやってターゲットの心をつかむのかという部分は真似されにくいので、上記でいちばん差をつけやすいのはここだというお話でした。
連続性をもたせてこその最適化
- どう売るか(LP)を起点に、誰を(ターゲティング)、どう誘うか(広告クリエイティブ)考える
- 誰に売るか(ターゲティング)を起点に、どう誘って(広告クリエイティブ)どう売るか(LP)考える
コンバージョン最適化のために必要な3点のポイントは、一貫して考える必要があります。
それぞれがバラバラの設計になっていると、ユーザーの集中力と購入意欲が途中で途切れてしまい、最後のアクションまで行き着くことができないからです。
マーケティング・制作・集客を分業でやるような場合には、ここを非常に気をつけてやらないといけないなと思いました。
説得型LPの構造
説得とは、相手が納得して行動を起こすための働きかけを指します。
なぜ説得なのかというと、良い点をただ伝えるだけでは不十分であり、ユーザーが行動を起こしたくなるような、より強い働きかけが必要ということです。
伝えることとその順番
ユーザーへの説得がうまくいくためには、ユーザーの集中力をひきつけて、途切れさせないことが大切です。
特にスマホ利用時を考えると、外に出ていて、強い日差しの中、周辺にたくさんの視覚や聴覚の刺激がある中でサイトを見ているので、注意力は散漫になります。
- PC利用時とスマホ利用時では集中力に大きな差がある。興味をひき、集中力を高めていくことが肝要(余計なものを入れすぎない)
- そのためには伝える内容はもちろん、注意喚起から行動歓喜までの順番が重要になる
- 説得の手法には一定の形がある
理解と説得の4つの型
説得するための情報の伝え方には一定の型があり、商材の特性にあわせて選ぶと良いそうです。
- PAS(バズる記事型)
- PACAS(セールストーク型)
- PCAN(プレゼン型)
- QUEST(セールスレター型)
PAS(バズる記事型)
テレビの健康情報番組と同じ構成。気が散りやすい、テレビの前の視聴者でも惹きつけられるような流れを作る。
- Problem・・・問題を定義する=自分ごとにする←自分ごとになった途端に集中力が上がる
- Agitate・・・問題の深刻さを煽る←集中力を上がったまま保つ、そうでないと次のアクションにつながらない
- Solution・・・解決策を示す
PCAS(セールストーク型)
決断に時間がかかる、慎重に検討するタイプの顧客、金額の高いもの
- Problem・・・問題を定義する=自分ごとにする
- Cause・・・問題の原因を説明する
- Amplify・・・さらに詳しく説明する
- Solution・・・解決策を示す
PCAN(プレゼン型)
BtoBに向く。担当者が意思決定者を説得する工程で役立つ。
- Problem・・・問題を定義する=自分ごとにする
- Cause・・・問題の原因を説明する
- Answer・・・解決策を示す
- Net Benefits・・・解決策の優位性を示す
QUEST(セールスレター型)
個人のコンプレックスを解決するような商品に向く。QUESTフォーミュラとか呼ばれるやつですね。アフィリ系の商品はこのパターンが多い印象あります。
- Qualify・・・絞り込む、自分ごとにする
- Understand・・・共感する=この人は信用できる、この人の話は聞いてみたい、と思わせる
- Educate・・・啓発する
- Stimulate・・・興奮させる=問題が解決したことを想像させる
- Transition・・・変化させる
説得のための要素と配置
上記の型に共通して言えるのが、下記のようなポイントです。
- 解決すべき問題(または満たすべきニーズ)を提示することで、対象者に自分事だと思ってもらう
- 問題の原因や起きている状況、今後起きるよりひどい状況を説明することで、問題に集中させる
- 解決策を示し、解決できる理由を説明し、問題が解決された未来を想像してもらう
今日のまとめ
- 売れるサイトは広告を使ってトランザクショナルクエリを押さえ、それを起点に最適化のサイクルを回す
- トランザクションを数多く作っていくことがRankBrain対応であり、売れるサイトのSEOにつながる
- セグメントを切って一番を取る(地域一番店、みたいなやつ)
- 広告クリック前からCVまで、訪問者の思考や集中力を切らさないスムーズな流れを意識する
- ターゲティング、クリエイティブ、ランディングページの3点をセットで改善し続けるのがCV最適化
セミナー全般の感想
今回のセミナーで特に印象的だったのは、下記の3点です。
- 企業が収益を上げるためには広告運用とサイトの最適化が必須
- 一般的な時事業者が「わかるサイト」を目指してSEOをやってしまうのは優先順位が違
- リアルでの評価がネット上の評価につながる(=認知度、CV、口コミ評価)
リアルの評価=ネットの評価
リアルでの評価がネットの評価につながる、というのは、以前にゴンさんのセミナーに参加したときも同じ事をおっしゃっていたなあと思いました。実際は品質が悪いのに、サイト上でだけ良く見せることが無理な時代になってきたということですね。
消費者にとっては、検索結果から何かを買ったり申し込んだりするときに失敗しにくくはなると思いますが、超大手のモールだけで上位ページが占領されてしまって、万人受けしないけど面白いものに出会えなくなったりするのかな。。
「広告集客は高い・ブログ集客は安い」というのはたぶん誤解じゃないかな
ここ数年、コンテンツマーケティングやブログ集客が注目されていますが、実際に成果を上げることができた企業はごくわずかなんじゃないかな・・・と思ったりします。
ブログで上位を取ろうとするのは、ブログを本業にして命をかけて記事を書いている、プロのアフィリエイターさんやメディアさんと張り合うことになるので、やはりそうとう難しいと感じます。
ブログ集客のメリットは、初期投資が少額なことです。リスティング広告に出稿しようと思うと、一般的には「初期費用10万円+月額運用費5万円+月々の運用費」くらいの出費なので、広告をやったことがない中小零細企業だと、少し勇気が必要な投資になるんだと思います。
ただ、長期的に見て、ブログ集客が安いかといえば、まったくそうではありません。
プロのアフィリエイターをキーワードを争うのなら、数日や1週間をかけてようやく1記事を書くくらいの努力が必要で、その工数の値段を考えたなら、決して安くはないはずなのです。
その努力ができた企業さんも実際にいらっしゃるので、企業の体制や担当者さんの向き・不向きの問題もあると思いますが・・・。
あと他にメリットとしては、集客ブログを書くことを通じて、マーケティングのセンスが磨かれるというのもあると思います。キーワードを調べたり、ユーザーが求めていることを考えたり、そういったスキルを身につけることができれば、広告にもサイトのCV改善にもいかせると思います。
集客のご相談を受けたときには、ブログ集客のメリットとデメリットをお話して、もう一つの選択肢として、積極的に広告をおすすめしたいと改めて思いました。
これから4年も生き残っていたい
住さんの制作者向けセミナーは、あと数年はやる予定がないとの事でした。前回は4年前だったので、もしかしたら4年後くらいに、オリンピックくらいの間隔でやるかもとのことでしたw
わたしは前回のセミナーにも参加させていただいて、当時は本当に衝撃を受けたのでした。SEOやマーケティングの知識を全く持っていなくて、自分が商売や集客に関してあまりに無知なことに初めて気がついて、ショックを受けたのです・・・。
制作やデザインも大切だけど、もっと根本的な解決方法が世の中にはあるみたいだ。でも自分は何もしらないし、明日から何ができるのか分からない。でも、もっと分かりたいと思いました。
それから、仕事仲間とブログを書いてみたり、アフィリエイト塾に通ったり、マーケティング会社で修行させてもらったり、リスティング広告会社でも修行させてもらったりで、ずっとモヤモヤしてジタバタして、あれから4年経ったけど、まだまだ分からないことだらけです。
でもこれから4年間も、またモヤモヤしてジタバタして、それでも生き残れていたら、またセミナーに参加したいと思います。
4年前は自分でセミナーの感想を書いてなかったので、検索して見つけた、当時の参加者さんのブログをいくつか貼っておきますね。